* 未選択(5) * イベント(4) * 日常(69) * 再臨(7) * HP(11) * 無双(8) * 呟き(46) * 小話(15) * 采配(16) * バトン(1) * 大河(1) * オリジナル(4)
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オリジナル話。登場人物は「私」と「あたし」という奇妙な話です。
少々バイオレンス要素があるので、気をつけてくださいませー。
あなたの願いをかなえましょう。
なんでも、かなえてあげましょう。
欲しい物は、なんですか?
甘いお菓子?
使っても減らないお金?
色とりどりの可愛らしいお洋服?
あなただけのための、王子様?
好きなだけ、願って下さい。
私は、何でも叶えられる。
それだけの力が、私にはある。
だから、貴方の願いを言ってください。
どんなことでも、幸せな夢でもいけない夢でも、望みのままを。
だから。
どうか、そのかわりに。
―――どうか、私を信じてください。
私は、いる。
私は確かに、ここにいるのです。
毎日、毎日、私は生まれる。
毎日、毎日、そして貴方に殺される。
今日は、曇り空と、車に轢かれた猫の死骸と、同僚からの心無い言葉と。
それから、それから。
貴方は、簡単に私を殺し、叩き潰す。
「どうして、潰しても潰してもわいてくるのかしら。
まるでゴミ山に湧く蛆ね。殺しても殺してもきりがない」
私の死骸を見つめて、貴方は美しい片眉を歪めて醜悪な笑顔をつくる。
「貴方が私を求めているからですよ」
額を割られたまま、私は呟く。
ああ。今日は背後から斧で頭をぶち割られたのだったか。
だくだくと赤い血を流しながら、私は頭痛に眉をしかめる。
「悪い冗談よね。さっさと死んでくれる」
「言っておきますが、私が再起不能になったら、あなたも動けませんよ」
「おあいにくね。機械的に働くことぐらいならお手の物よ。
むしろ、あたしが動けなくてあんたが生き生きしてることもあったんだから」
「あの時の貴方は見物でしたねぇ。
ただ、私のことばかり考えていて、真っ暗な部屋の隅で膝を抱えて。
ステキな恋する眠り姫の御姿でしたよ」
「だから死ネッっつってんのよこのストーカー。反吐が出るわ。
あたしが芋虫みたいに動けない横で生き生きした顔しやがって。
最低最低極悪醜悪低俗御下劣人の不幸を見て楽しむ寄生虫野郎。
あたしがこんなに性格悪くなったのはあんたのせいよ。
さっさとどっか行っちまえのたれ死ね千年地獄でのたうち回れ」
「私を否定するのも結構ですが―――…」
彼女のオーラがどよどよんと黒く吹き出てくる様子を見つめて、私はあわてて起き上がる。
それにつかまってしまうのも悪くはないが、そうすると彼女は悪い方向にしか行かない。
いや、むしろ、私を否定するから、なおさら悪循環なのだけれど。
「私を否定する以外に、貴方が前進する方法はないんですか?」
「そんな方法があったら、とっくにやってるわ。
あたしの原動力は恨みと呪い、日々の糧は嫌悪と憎悪。
あんたみたいな頭に華が咲いたぽやぽや野郎なんて永久におよびじゃないわ。
とっとと幻想幻影幻覚の世界におててつないでかえってちょうだい」
「それがそうもいかないんですよね」
ステッキを振り振り、燕尾服姿の私は首を傾げる。
「私だって帰れるものなら帰りたいですよ。
でもしょうがないでしょう、召還されちゃったものは。
それに、帰るための唯一の鍵は貴方がどこかに捨てちゃったんですよ」
「えこえこあざらくえこえこあざらくえろいむえろいむえっさいむ。
つつしんで奈落の底へとお帰り下さい」
「そんな呪文で帰れるなら苦労しませんがなー。
大体、貴方が私をつかまえてはなさないんですよ?」
「それが最大の謎なのよね。最大の汚点と言ってもいいかもしれないわ」
なぜか、私の両足には鎖、両手には長い鉄の手錠がからみつき。
その先は、彼女の心臓からのびていた。
「ねえ、これ、どこの修理工場に行ったら取れるのかしら。
電動ノコギリぐらいでないと切るの無理よね」
「おそらく核ミサイルでも無理だと思いますよ」
無駄な質問をする彼女に、私は溜息をつく。
「貴方が私と契約した内容を思い出して、それを破棄しないかぎりはね」
「そんな内容、あったかしら。思い出せないわ。
それに、呼びだしたのは悪魔ベルゼブブかベルゴフェールよ。
あんたみたいなひ弱な悪魔?魔術師?なんか、こっちから願い下げよ」
「あ、あのお二人、残念ながら今出払ってるんですよねー。
今頃イギリスかロシアでロックとコサック融合しながら踊り狂ってるんじゃないですか」
「どうして?」
「格の高い悪魔は、より強い欲望の所へ行くんですよ。
その方が、実入りがいいですからね」
「あたしの召還交換条件より、フィッシュ&チップスやウォッカがいいっての?!」
「むしろ数千人の観客の生き血やコルホーズ飢餓の見物なんじゃないですかね」
大体、あなたの交換条件じゃあ、と、私は肩をすくめた。
「人一人の人生、変わるかも知れないきっかけを作る程度の魔力しかない」
「……」
そこで何故か、彼女は黙り込んだ。
「……今のところは、それでもいいわよ」
「……いいんですか?」
「いいわよ。…でも、それで、呼びだせたのがあんたみたいなへなちょこ悪魔?」
「失礼な。この偉大なるジャーメインと言われた私がへなちょこだと?」
「だって、あんた、無能でしょう」
「……!!!」
一番言われたくないことを告げられ、私は耐えきれない苦しみに頭をかきむしる。
もっとも、シルクハットをかぶっているので、かけたのは側頭部だけだったが。
「おお、なんたること!!!
死者を蘇らせ、尽きぬ黄金を雨降らせ、
全知全能にして不死の賢者と言われた私が!! 無能?! 無能ですと?!」
「だって、あんた、あたしの願いを叶えてくれないでしょう?
だったらしょうがないから、独力で叶えようとすれば邪魔をする。
これを無能と言わずしてなんと言うのよ」
「失礼な!! 私だって、貴方の望みをかなえることぐらいできますよ!!!」
「じゃあ、さっさと叶えてよ。どうしてそれができないの?」
「そもそも、貴方の望みが私の得意分野と反するのです。
イタリアンに行ってフレンチを注文するようなものですよ!!!
ピザ屋に行ってスシを頼むようなものですよ!!!
白に、黒になれと言ってるのと同じようなものなんですよわかってます?!」
「それが理不尽だろうが不条理だろうが関係ないわ。
あたしが欲しい物は、あんたの力じゃ変わらないものなの。
だから、あたしにとってあんたは無能なの。
だから、あんたが叶えられる願いと言ったら、せいぜい何度もあんたを殺すことぐらいよ」
「それが唯一の仕事とは、なんとも……腑に落ちませんね」
血まみれになった額をハンケチで拭き拭き、私は嘆息する。
「……どうしてそう、貴方の人生観は攻撃と闘争に満ちているんでしょうね」
「だって、お伽噺は、絵本の中でしか夢が叶わないもの」
彼女は、はんと莫迦にしたような笑みを浮かべた。
「シンデレラや白雪姫を読んだ女の子が大きくなったら、誰に会うの?
ヒーロー戦隊に夢中になった男の子が大きくなったら、戦う相手は誰?
素敵な王子様なんて嘘。とことん悪い魔王なんて嘘よ。
下心ありありのスケベ男に、力で押さえつけるイヤミな上司。
どっちも人間なの。絵本みたいに、勧善懲悪なんて存在しない。
この現実には相応しいお伽噺はね、誰も語らないものなのよ。
こどもべやに並べられた絵本たちはね、甘い毒なの。
この世界に生きてていいんだよっとごまかす、着ぐるみのネズミやウサギ。
だって、最初から現実なんて知らされたら、赤ん坊は皆おんぶひもで首をつるわよ」
「……お伽噺なんて信じない。それなのに、貴方は」
私は、なんとも言えない気持ちになって目を細めた。
「私達の魔力は、信じるんですね。そんな、もっと目に見えないものなのに」
「……だって、…体感してきたもの」
屈折した笑みを浮かべて、彼女はぐっと左手首を突き付けてきた。
そこには、
―――何筋かの、切れ込みが入ったような、赤い傷痕が。
「…あたしに、かけられた呪い。
このせいで、あたしは何度も死にかけたし、友達も消えたし、家族もいなくなった」
「……知っていますよ」
「でも、だからあたしは魔術を知った。呪いも憎しみも、それ自体には力がある。
それは、あたしを何度も崖っぷちに追い詰めるほどの力。
でも、あんたは―――」
そこで、彼女は眼を細めた。ひどく、忌々しげに。
何かの痛みに耐えるかのように。
「確かに、昔のあたしは、あんたを呼んだかも知れない。
それこそ、何度も、何度も。
でも、あんたは。あんたの力は―――あたしを助けてはくれなかった」
「……私は」
私は、ゆっくり口を開いた。
「今、私はここにいます。貴方の目の前に。
貴方に話しかけられるほど、具現化した。それほどの強大な力も持った。
それでも、貴方は、私をいらないというのですか?」
数秒の、沈黙。
そして、彼女は、それ以上の静かな怒りを以て、応えた。
「なら、問うわ。
あんたは、今のあたしの願いをかなえてくれるの?」
できない、でしょう?
口ではなんとでも言えるけど。
要は、できない、んでしょう?
「……それは」
「姿が見えても関係ない。あんたの言う強大な力なんて、どうだっていい。
あたしは、あたしの願いを叶える者が誰であれ、
それがあたしに必要な存在と認める。
無力なあんたに、無能なあんたに、あたしは用はない。
出て行け。消えろ。―――あたしは、あんたの存在を認めない」
「――――ッ!」
瞬時に、私の胸板に円盤大の巨大な穴が開く。
それこそ、私の胸を通して背後の景色が見えるくらい、大きな大きな穴。
対装甲戦車用のカタパルトか、マグナム弾。
だから私は自然に当然のように、血と肉と骨と臓物を飛び散らせて倒れた。
「……これ、で」
私は、血反吐を咳と共に吐き出しながら、つぶやいた。
「108回目、ですね。貴方が、私を殺すのは」
「だからなに?」
私を見下ろす彼女は、虚ろな瞳で、鼻を鳴らした。
「あんたがあたしから離れるまで、何度でも繰り返すわよ。
それこそ、あんたの姿が見えなくなるまでね」
「……それが、私の叶えられる唯一の願いなのでしたら」
私は今にも消え入りそうな声で、しかし力を振り絞って告げた。
「何度でも、お望みのままに。叶えて、さしあげましょう。我が君」
「……つまらない男ね」
彼女ははじめて、溜息をこぼした。
「魚の餌にもなりゃしない」
さらさらと崩れて砂になっていく私を見やった後、彼女は踵を返して行ってしまう。
後に残るのは、私だけ。
いえ―――彼女がいなければ、私は存在できないのだから、
私すらも残らないというべきか。
「――――……次は、何時頃に復活できるでしょうかね」
ぼそりと呟くのは、私ではなく彼女の呻き。
だからこそ私は彼女と契約を解除できず、私は彼女から離れられない。
「……何時でも、貴方のお望みのままに」
私は、つぶやく。
その時だけは、彼女の意志を離れて、行き先を決める。
私は、ジャーメイン。
彼女に召還された、しがない存在。
私は彼女の願いをかなえない。
なぜならば、それが真の彼女の願いだから。
そして、彼女が私につけた鎖は外れない。
彼女が、あの頃の約束を思い出すまで。
私は、昔の呪文を唱え続ける。
幼い彼女が願った、彼女にしか紡げない魔法を。
あなたの願いをかなえましょう。
なんでも、かなえてあげましょう。
欲しい物は、なんですか?
甘いお菓子?
使っても減らないお金?
色とりどりの可愛らしいお洋服?
あなただけのための、王子様?
好きなだけ、願って下さい。
私は、何でも叶えられる。
それだけの力が、私にはある。
だから、貴方の願いを言ってください。
どんなことでも、幸せな夢でもいけない夢でも、望みのままを。
だから。
どうか、そのかわりに。
―――どうか、私を信じてください。
私は、いる。
私は確かに、ここにいるのです。
毎日、毎日、私は生まれる。
毎日、毎日、そして貴方に殺される――――
演劇二次創作の続きです。
晴明が女性としゃべってます。
…つか、舞台だと普通に見れるのに、文にしたらえらくおっそろしいシーンだ…(汗)
色気も面白さもございません。
説明が少な過ぎてイミフな短文です。なので半分オリジナル。
最近煮詰まり過ぎて萌えが枯渇しているので
書けるものから書いていこうと思います。
読者様にはとっても不親切な乱文。ご容赦あれ。
晴明を持ってきたのは、説明しなくてもまあわかるからです。(コラ)