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迷っていたの。
迷った夢を観ていたから。
あのひとに、迷うことが、あたしの幸せだったから。
でも、もうその頃には戻れない。
あたしは、ちがうあのひとに、出逢ってしまったから。
それまでの夢から、醒めてしまったから。
あたしの世界は、もう覚醒<めざ>めた人のもの。
もう、夢に迷いまどろんだ、桃源郷<あのひと>の幻は見えないの。
「幼き日に忘れた、春の夢をおぼえているか?」
不意の問いに、妲己は目をぱちくりさせた。
周囲はどこを向いても煉獄のような光景だというのに、場違いに昔を懐かしむような口調。
地獄のような今を隻眼で見据えて、過去を焼き払い踏み捨てていくようなこの男が、そんなことを
言ったから、余計に違和感があって、衝撃的だったのかも知れない。
「どうしたのよ、政宗さん。いきなり突然」
「悪夢を観た。昔の、わしが幼き日の頃の夢じゃ」
だからどうだというわけではなくて、ただそうだったからそのとおりのべているだけの響き。
淡々とした、感情のこもらない口調が、余計に彼の恐怖を連想させた。
「父上も、母上も、小次郎すら、わしと共にいた。
いっしょにいて、笑っておった。わしを、愛しいと、皆言うた。
それが、当り前の世界で、わしは思った。
わしはおおきゅうなったら、天下人になるのじゃと。
このひとたちを、しあわせにできるような男になるのじゃと」
この思いこそ真実だと確信する感触と。
同時に、耐えきれないほどこみあげてくる意味不明の嘔吐感。
その両方に苛まれ、うなされて目覚めたのは、残酷なほどの現実。
「あれほど真実じゃと思うていたものが、目の前でがらがらと打ち砕かれる感覚は忘れられまい。
だからこそ、あれは夢じゃ。
迷うた心で観ていた、迷夢なのじゃ」
それでも。
それは、幼き日には確かに現<うつつ>だった、春の夜の夢。
「幼き日に果たせなかった夢というやつほど、厄介じゃな。
亡霊となりて時折現れおる。
これこそ、果たすべき目的、真実お前が求めるものじゃと。
もはや、体はとうに朽ち果てておるにもかかわらずにな」
「――――……」
政宗の表情は逆光に隠れて見えない。
だが、どんな顔をしているか、妲己には大体想像がついた。
「……そうね。確かに、厄介だわ」
襲いかかってくるのは、過去の自分。
あれほど切望した、この世に産み出してあげられなかった我が願い。
だからこそ、厄介なのだ。
敵は他でもない、自分自身なのだから。
「でも、おあいにくね、政宗さん。
あたし、昔の自分に負けてやるほど、お人よしじゃないの」
阿鼻叫喚の地獄の光景。
全身を業火で焼き尽くすほど埋め尽くされた紅の向こうに、亡霊が見える。
長く美しい銀髪を流した、仙界の女神が。
「あたしにとっては、あのひとたちは幻。
今のあたしには、遠呂智さまが現<うつつ>なの。
昔のあたしがどう思おうと。
それは、今のあたしの行く手を阻む障害<もの>にはなりえない」
今のあたしにとっては。
「遠呂智さま以外のものぜんぶ、迷った夢だわ」
亡霊が、迷った夢が、それでもあがいて襲ってくるというなら。
出す答えなど、決まっている。
「うーんとたのしく、いたぶって潰してやるだけよ」
ケーンと、どこかで。
ちいさな子狐の、鳴き声がした。
それはもしかしたら、昔のあたしだったのだろうか。
「ね、…さあ、たのしみましょ? 女媧」
今度こそ、貴女を。
「あたし自身の手で、殺してあげる」
妲己は、揺らぎもない感情のまま、それは嬉しそうに微笑んだ。
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小話のつもりだったのに、ただ二人の会話だけなのに、何故ここまで長くなるよ…orz
と、いうわけで、のっけから相当暗いですが妲己×女媧の話です。
話が進めば、女媧×妲己っぽくもなるかな…?
リバーシブルとか百合とかそっち系ではないと思いたい…んですが(自信持てよ)
精神面でいろいろどんどろ暗いかも知れません。
日記でつづけて書いていくです。
2か月ぶりに更新したのに何故に左伏左ではないとお叱りを受けそうですが、
こっちの方がそれよりずっと前からの大事な約束だったので。
その時とおんなじ話でもないけど、補足と言う形でミックスして書きます。
左伏左も、その次に書くですよー♪ しばしお待ちを☆